MISSING PARTS OUTSIDE  第2話


    intermission


 大将との電話が終わった後、恭ちゃんとオヤスミ言うてから自分の部屋へ戻った。
 綺麗に片付けとる恭ちゃんとこと違うて、オレんとこは布団敷きっぱなしやったから寝る仕度も
特に要らん。電気消すだけや。
 最近は一日おきくらいの朝方、ゴミ出しの度に恭ちゃんに“襲撃”されとるから、前に比べれば
画期的にきれいになっとる方やけど、今日はゴミの日やなかったし、忙しかったからな。

 ――そう、今日は色んなことがあった。思い返しながら煙草取り出して火ィ点ける。
 さっき大将と電話でした話と、その前にご隠居の部屋で三人でした話のこと考える。んで、やっぱり
恭ちゃんは名探偵やなーて嬉しゅうなる。


 大将が恭ちゃんのことウチに預ける言い出して、ご隠居もそれ承知して。
 変なヨソもんの連中が遠羽に入り込んで来とって。
 オレには恭ちゃんのボディガード言いつけて自分はどっか出かけてしもて。(そんで京香ねーさんに思い切り怒られとんねや。阿呆やなー)
 せやからオレはてっきり、ヨソもんの奴らは恭ちゃんを狙うとるもんやと思い込んでた。

 でも、恭ちゃんは違うた。
 単に病み上がりっちゅうだけで“所長命令”まで出されて此処に預けられるワケあらへん。何か
大きな理由が、それも結構ヤバい裏があるかも知れんて気ぃ付いとらん筈ないのに。
 そんな先入観には全然とらわれんで、今日尾行された理由をあっさり解いてみせた。

 ……言われてみれば当たり前なくらい筋が通っとる話や。クスリ扱うてる裏の連中が、病院の周り
うろちょろしとるなんて。それが何や?っちゅうくらいのもんやな。

 さっき電話が終わった後で恭ちゃん言うとった。
『だいたい、直接の知り合いとかこれまでの事件でかかわった人たちとか、そういう関係があれば
 俺のこと知ってるだろうけど、そうじゃない人が“真神恭介”を重要視することは、まずないと思う
 んだ。報道関係でも俺たちの名前は伏せられてるしな。少しくらい事情を知っても、むしろご隠居や
 所長が“本陣”だと思うだろう。――威がご隠居を襲った時みたいに』
『だから海外から来たようなブローカーが無名の俺をわざわざ狙うっていうよりは、病院かその
 関係者が目標と考える方が自然だと思ったんだ』

 そんでも心なし顔が曇ったのは、万一の場合を考えてご隠居のこと巻き込みたくないと心配したん
やろな。……でも、ウチ出るなて大将に釘刺されたばっかりやしなぁ。あのオッサン、そこんとこまで
読んでたんか。

『ふーん。なんかそう聞くと、ますます連中けしからんな。こない名探偵つかまえてオマケ扱いかい』
 軽口たたいてみせたけど、恭ちゃんノーリアクションで少し暗いカオのまま畳の方見とる。
 しばらく待ってみてから
『なんかあったんか』
 声かけたら、ようやく顔上がって。
『……ちょっと気になることがあって。つい考え込んでた。ごめん』
『それ、さっき大将に訊いてたことと関係あるんか』
 突っ込んでみたら目ぇ大きくしてこっち見て、それから溜息ついた。
『俺、そんなにわかりやすい顔してるかな』
 けど、何考えてるかは言わんかった。……しゃーないな。
『いや、オレの愛のなせるワザ。恭ちゃ〜ん!!』
『いきなり抱きつくなああっ!!』


 冗談でごまかしてもうたけど、ホンマはオレも“嫌な感じ”は、しとる。
 今日ヨソもん連中の動きをつかんだことで、ちょっとは事態が見えてきたはずやのに。なんか
胸ん中でモヤモヤするもんがある。
 気ィつけなあかん。こういう感じは結構当たる。下手歩いて足元にデカイ穴開いとったらシャレに
ならん。かかっとるんが大事なもんなら尚更や。
 喫い終わった煙草、空き缶のフタに押し付けて揉み消しながら自分に言い聞かす。

 恭ちゃん探して街中駆け回ったあん時の、文字通り身も心も凍りつきそうな思いはまだオレん中
に生々しく残っとる。
 本音云うたら二度とあんな思いしとうないけど、恭ちゃんは危ない目に遭うても探偵辞めたり
せえへんし、オレかて枕ヶ碕に出入りするような人間や。この先どんなことがあるか分からん。
 そんでも。

 何が相手かて負ける訳にはいかん。護り抜いてみせる。







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