MISSING PARTS OUTSIDE Intermission
「天秤の行方」番外
雪の降る前に 〜身辺整理〜
窓の外が暗くなった。 鈍い色の空模様を眺めてからブラインドを閉じ、電気をつける。 この部屋で夜を過ごすのは久し振りだ。 日中ならメールチェックとか着替えの持ち出しとかで結構出入りしていたけれど、自分の部屋に泊まる(変な云い方だけど) のは、入院したり柏木邸にずっと世話になっていたりで、もしかすると数十日ぶりくらいになるかも知れない。 そして、あと何回かここで夜を迎えたら――再びこの部屋を留守にする時が来る。 気持ちを引き締めて机に向かう。 今日の昼間のうちに、所持品については出来る限りの整理をしておいた。 あまり気分の引き立つ作業ではなかったけれど、事態がここまで来た以上、最悪の場合にも備えておかなくてはいけない。 あの出来事のおかげで関係者の構図については大体見えた――と思う。 でも、まだわからない事もある。 一番厄介なのは、このままではどうしても知り得ない重要なポイントがあって、それを手に入れる為にはかなり捨て身の 覚悟で飛び込んで行かなきゃならないということ。 話をする余地はきっとある。でも、そこには不確定要素も絡んでくる。 万一の可能性は避けて通れない。だから。 机の上に置いてあるのは便箋が一冊と何枚かの封筒。 伝えるべき事を頭の中で整理して、まずメインになるものを一通作成する。 ペンダントは成美さんに、そのまま。 その他の私物については指定があるものを除き、関係者の話し合いで決めてもらうこと。 リストにあげる連絡先へそれぞれ然るべき通知をしてもらうこと、等々。 「それから・・・と」 宛名別に個人的なメッセージを数通。 成美さん。 ご隠居。 所長。 京香さん。 氷室さん。 「なんか、誰からもめちゃくちゃ怒られそうな気がするなぁ・・・」 キンタ。・・・には、SAKUへの連絡もあわせて頼む事にする。一応パソコンにもメッセージファイルは置いておくけど。 諏訪さん。この手紙があれば、余計な波紋を少しは抑えられると思う。 奈々子にも、一応。 ・・・まだまだ、伝えなきゃいけない人、言わなきゃならない事はたくさんある筈だけれど。 すべて書き残しておく余裕は、残念ながらない。 うーん、結構難しいな、こういうの。 途中でペンを止めてふと手帳に目をやる。一時しまっていたものを最近また取り出して、そこに挟んである白い封筒。 (・・・森川・・・・・・) 受け取った時は読みながら馬鹿だなぁなんて思ったけれど、いざ自分が書く段になると案外うまく出来ないもんだな。 (お前に会うことになったら・・・ やっぱり殴られるのかな) そうかも、知れない。 ずいぶん時間が掛かってしまった。もう時刻はかなり遅い。 これまで書き上げたものをひとまとめにして横に置き、最後の一人に向けてペンをとる。 『哲平へ』 “ これがお前の目に触れているなら、俺は戻れなかったんだよな。約束を守れなくてごめん。 ここに、お前も含めたみんなへのそれぞれの手紙と、後始末について頼みたい事を書いた書類が一緒に入ってる。 ご隠居と所長、両方の立会いのもとで開けてくれ。それじゃあ、よろしく ” 書きながら思う。そう易々と生命を捨てるつもりはないけれど。それでも。 ――お前が目にするものが、この封筒じゃなく あのとき伝えておいたもう一方であるように。 ・・・俺も、できるだけやってみるから。 〔了〕 2004.12.02 |
★コメント : ・・・見つけてしまいましたね。(笑) これは3話の予告編とでもいうのでしょうか。ある時点での恭介のモノローグです。 物語がここまで来たら、3話も、ということは「天秤」全体も大詰めを迎えます。 んでバッドエンドになっちゃうとダークサイド行きかも(爆)。 連載公開はまだ2話途中ですが。中断してる間でも、3話の内容は頭をいつも駆け巡ってました。 今も、そうです。――早く3話に辿り着きたいです。 ホントいうと映画の予告編みたいに各シーンフラッシュバック!! ていうのもやりたいですが、それだと のちのち場面の詳細で変更があった時ちょっと困りそうなので(汗)。 ていうか、今、別のものをいっしょけんめい書いてる途中な筈なんですが!! 突然この小話が生まれてしまいました。 あっちも勿論書いてますから、ご心配なさらないでくださいね〜(超私信)。 3話である程度まで進んだら、この話はオープンにします。 そして、3話時点でのコメントも追加しますのでお楽しみに(?) ※お帰りはブラウザバックでお願いします・・・ |
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